小野尻峠とは、兵庫県の多可町中区と丹波市を分かつ山地にある鞍部で、 その峠下を嘗て「小野尻隧道」(竣工:1909年 全長:219m)にて越えていた。 今は廃された旧隧道へ至るまでに、旧道が存在する。 [地図]
現在は「兵庫県道86号 多可柏原線」が 「小野尻トンネル」(竣工:1978年3月 全長:353m)にて越えている。 旧道は入って直ぐに御覧の有様だが、台風一過後訪れているのでこの状態な訳で、倒木がなければ、なんとか奥まで進入できそうです。
旧道は現道よりも高い位置を山の斜面に沿いながら上がってくる、 対して現道は緩いカーブを描きながら一気に駆け上がってくる。 技術的進歩の差か?こちらの旧道入り口はドラム缶と鎖により遮られている
旧道との交差部からトンネル側を望む。 左の藪の奥に旧隧道は存在するのだが、現トンネルと並んでいる。 旧トンネルと平行に新トンネルが穿たれることは珍しいことではないが、 直ぐ横に忘れられた煉瓦隧道があるということがなんとなく面白いではないか
この藪を右にカーブすると旧隧道が現れる。 アクセス路もアスファルトがしっかり残っており 荒れてはいるものの到達は容易だ。
高さ制限3.3m標識が残る。鐘ヶ坂隧道などと違いすぐ横に旧隧道があるにもかかわらず、 心霊ファンや旧道好き、近代土木好きなど一部の限られたマニアでない限り、 平行して煉瓦隧道が在ろうとは誰も思わないだろう。
倒木を掻き分け旧隧道前に到達する。 いつもながら、この山の中に突如として現れる隧道には不思議な感覚を覚える。 それも、現代的な「ああ、そろそろトンネルだな」と思わせないような何かがある。
石積みのポータルと、煉瓦のアーチ環。 旧隧道は丁度鞍部の真下を貫いている。
要石のみ石のようである。 要石も含め、所々損傷の激しい部分がある。
ポータル横には一応排水機構を備えていたようだが、今となってはあまり役には立っていないようだ。
絶え間なく降り注ぐ沢水。 こちら側は隧道前の崩落もなく、ある程度は側溝を経て隧道とは逆に水を流している。
それでも、隧道内は水浸し、どんよりと濁った水が隧道内にプールを作っている。
こちらは2008年に訪れたもの、獣除け柵が設置されていた。
笹薮が刈られ隧道までまっすぐ見渡せる。
隧道前には少し倒木がある程度、隧道前にあった大きめの隕石が取り除かれていた。
洞内プールは同じくらいの深さだった。
2020年に訪れると隧道前が明るくなっていた、杉林が伐採されていたのだ。
しかし肝心の隧道前はというと……
倒木がひどい、かつては坑口が見えていたというのに!
坑口までやってくるのに倒木を上って跨いで潜ってと大変だった。
2004年、2008年に比べて少し洞内プールの水位が側壁の石ブロック一つ分上がっている。 鐘ヶ坂隧道のような洞内工事までせずともよいからせめて坑門前の土砂と倒木の撤去を行ってほしいなぁ。
変わって反対側(西側)、東側と違ってこちらは洞前に土砂の堆積がありそれが全体の綺麗な撮影とそして排水を拒んでいる。
多可町側はポータルの損傷が激しい。 崩落防止のためか、金網が張られ保護されている。 おそらく現役の時分に取り付けられたものだろう、 まさか廃されてから付けられたわけでもあるまい。
途中、閉塞もなく真っ直ぐの隧道で反対側の坑口がよく見える。 こちら側も沢水が迸っているが、隧道前が塞がれているため、 水は絶え間なく隧道内へと流れ込んでいる。
今ではトンネルを抜けた向こうに掲げられている町標識がトンネルに入る前に掲げられていた。 旧山南町のカントリーサイン。
東側と違い倒木や藪がすごくて引くと隧道が全く見えない。
しかしその倒木までは何故かきれい。
もう少し引くと今度は石がごろごろしている。
右手の小さな沢が大雨により小さな土石流を引き起こしたらしい。
こちらは2008年になってもさして変わらない。
旧・廃道探索者によるものだろうか、踏跡がある。町標識隣にはカーブミラーがあった、カーブ?
引いてみてもあまり変わらぬ風景。
12年経って見ればその倒木がひどい、こちらも坑口前に到達するのに難儀した。
引いてみるとそんなに変わってないといえば変わっていない。
しかしもう少し引いてみるともう道があったようには見えない。
こちらも東側同様山に手が入っていた。
宝暦九年の銘があるお地蔵様。古来より旅人の安全を見守ってきたのだろう。 あ、でも、何地蔵だったかは見忘れた。
休憩広場の造成により旧道敷きはいったん消えていたが、 谷の方に目を見遣ると再びそれらしき道筋が復活している。 因みにここから多可町道牧野3号線に指定されている。
旧道が新道と共に現役だった時代があるようだ、 現道方向に向けて旧道に合流注意の標識が現存していた。 しかし、こっちが優先……?
三角コーンで簡易に通行止されている、でもこの前に鉄製車止めが立っているんですけどね。
廃されてからどれくらい経つのだろうか? 所々がアスファルトダート化し路面に草も生えている。
両脇からの豊かな植生と路面に雑草は生えているが、 致命的な欠損はなく車も通行できないことはない。 まぁ、車止めがあるから無理なんだけど。
少し開けたところに出ると、様相が一変する。 「自動車は通行できません」その看板が示すとおり、確かにこの先通り抜けられない。 僅かながらも利用があるのと、無いのとではここまで差が出るとは。
そこからは狭いながらも、利用されている現役の道といった感じ、 程なくして現道へと合流する。 [地図]